飲食店さんに少しでもお役に立てることができれば•••

ワインショップでの仕事の中で、飲食店さんにワインを卸す仕事があります。まだ当店のワインを知らない人に、いきなり当店のワインはいかがですか?「こんなワインがありますよ」とご提案することが多いのですが、ふと考えました。「こちらから、飲食店さんにお役に立てる情報をお届けできないだろうか」と。

ワインに興味があるけど、どのようにしてワインに触れたらいいかわからないスタッフさんが、おられた時に、少しでもお役に立てる情報がないかなと思い書いてみました。

飲食店様スタッフさん向けワインを「自分の言葉」で伝えるコツ

1. まずは、肩の力を抜くところから

ワインって、どうしても「難しいもの」と思われがちですよね。

実際、お客様の多くも同じように感じています。だからこそ、私たちスタッフ側が緊張してしまうと、余計にその空気が伝わってしまうものです。

大切なのは、知識の多さではなくて「安心感」と「楽しさ」を届けること。専門用語を並べるよりも、「ビールを選ぶ時みたいに、今日はさっぱり系がいいですか?しっかり系がいいですか?」と聞いてみる方が、ずっと伝わります。

レストランでお客様が求めているのは、ワインの楽しい「体験」。目の前の一杯が、その時間をちょっと特別にしてくれる。そのサポート役が、スタッフさんの役割かなと思います。

2. 覚えるより、感じる。感じたことを自分の言葉にする

ワインを説明する力は、知識の暗記ではなく、自分が体験したことをどう伝えるかにあります。

だからこそ、まずは自分でワインを飲んで、感じて、言葉にしてみることが大切です。

実際に飲んでいないワインを、自分の言葉で説明するのは難しいもの。

まずは一杯、自分の舌と心で味わって、その感覚を自分の中に落とし込む。

このステップが、大切で、接客の自信にもつながります。

もし自分が選んだワインがお店にない場合でも、機会を作ってそのワインを飲んで「自分はどう感じるか」を意識しておくと、それが少しずつ自分の言葉のストックになっていきます。お店にあるワインを飲んでいる。それがお客様にどんなワインって聞かれた時に自信をもって応えることができます。

自分で感じたことは、言葉に自然と力がこもります。

それはきっとお客様にも伝わると思います。

2-1 まずはブドウ品種から覚える。

ワインの味わいの8割はブドウで決まる、と言われます。

たとえばこんなふうにざっくりと分けておくだけでも、会話がしやすくなります。

• 赤・軽やか系 → ピノ・ノワール、ガメイ

• 赤・しっかり系 → カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、樽熟メルロー

• 白・さっぱり系 → シャルドネ•ソーヴィニヨン・ブラン

• 白・こってり系 → シャルドネ(樽あり)、ヴィオニエ

全部覚える必要はありません。「軽い or しっかり」の感覚だけで十分伝わります。

2-2. カタカナのワイン用語に慣れる

〜「ブドウ品種」「産地」「生産者」を“聞いたことある言葉”にする〜

ワインを説明するとき、まず壁になるのが“カタカナの多さ”です。

ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ブルゴーニュ、ロワール……。

ひとつひとつは難しくないのに、まとめて出てくると「うっ…」となりがちです。

でも、ここは心配いりません。

まずは 「ブドウ品種」だけ 覚えるところから始めましょう。

例えば、お客様との会話で、

「あ、ピノ・ノワールって聞いたことあります」

という瞬間があると、それだけでお客様は安心します。

“聞いたことがある言葉”があると、人は安心する。

それはスタッフにとっても同じです。1〜2種類でもブドウ品種がスッと出てくるようになると、接客中の心の余裕が全然変わってきます。

次に、「産地」の言葉に少しずつ慣れていきます。

「フランスのロワール地方のワインです」「イタリアのピエモンテです」

このくらいのざっくりした言い方で十分です。

そして最後に登場するのが「生産者」。

これは最初はなじみがないので、無理に覚えようとせず、「あ、生産者ってワインの“つくり手さん”の名前なんだな」というくらいの理解で大丈夫です。

この3つ、

👉 ブドウ品種

👉 産地

👉 生産者(=つくり手)

を“聞いたことある言葉”にするだけで、ワインの世界が一気にやさしくなります。

2-3 プロの言葉を“真似てみる”

最初は、ワインの説明文をそのまま読んでも大丈夫。

そこから少しずつ、「要約して、短く、自分の言葉にする」練習をしていきます。

まずは、プロの表現を見ながらワインを飲んでみて、自分の中で“しっくりくる”言葉をひとつだけ探す。

それで十分です。

例えば、

「洋梨や白桃の果実感を感じる味わいと、白い花の香り。綺麗な酸がまとめてくれて、お食事の最初から最後まで寄り添ってくれます」

この中の一部分——たとえば「洋梨や白桃の果実感」だけでもOKです。

その“しっくりきた”ところを、自分の言葉に置き換えて使ってみましょう。

いきなり長い専門的なコメントを“全部”覚える必要はまったくありません。

大事なのは、自分の感覚とリンクする言葉を見つけることです。

2-4 食べ物でワインをたとえる

「柑橘系の酸」よりも、「レモンみたいにキュッとした酸」と言った方が、お客様の顔がパッと明るくなります。

お客様とワインの表現で共有することが大切です。

白ワインの酸味なら、「レモン(しっかり)・りんご(爽やか)・ヨーグルト(まろやか)」と伝えると、お客様もイメージしやすいです。

渋みも、「お肉にぴったりな、しっかりした渋みですよ」と言い換えるだけで、会話が柔らかくなります。

3. お客様の好みを引き出す“型”を持つ

ワインをおすすめする時、迷ったらまずこの3つだけ聞いてみてください

1. 色(赤・白・泡)

2. 重さ(軽め・しっかり)

3. 予算(ざっくりでOK)

これだけで、お客様の好みがぐっと絞りやすくなります。

そして、できれば2本を並べて「こちらが軽め、こちらがしっかり」と比べてもらうと、お客様自身が選んだ感覚になり、満足度も高まります。

並べておすすめするときも、自分が飲んだことがあるワインだとよりいいですね。

4. 「わからない」は恥じゃないと思います。

接客中に聞かれて答えに詰まってしまう時もありますよね。

そんな時は、無理して答えようとするよりも、

「確認してまいりますね」

「私もこのワイン好きで、○○と合わせると美味しかったんです」

と、素直に伝える方がずっと印象がいいです。

わからないことを調べたり、聞いたりして、お客様に伝えたことにより自分の血肉になって、自分の中に染み込みます。

5. 楽しそうに話す人の言葉は、自然と伝わる

結局、お客様が一番惹かれるのは「その人の楽しそうな空気」です。

ぜんぜん完璧じゃなくても大丈夫。

スタッフ自身が「このワイン、好きなんですよ」と笑顔で話す瞬間が、何よりの販売トークになります。

おわりに

ワインを売るというと、つい“正解の説明”をしなきゃと身構えてしまいがちですが、実はそうじゃありません。

大切なのは「あなたの言葉」で、「その瞬間」をお客様とワインを共有すること。

あなたの一言がきっかけで、お客様との会話が弾み、思い出に残る一杯になる。

そんな瞬間を重ねるたびに、きっとあなた自身も、ワインがもっと好きになっていきます。

そのサイクルこそが、ワインを伝える仕事のいちばんの喜びだと思います。

好きになるとよりワインを知りたい。そんな気持ちになったら、ワインを自分から、勉強するサイクルに入り、ワインを見たら、どうしたらこのワインおすすめできるのかな。そんな状態になったら、すでにワインをおすすめするプロだと思います。

この文章がワインが難しいから楽しいかもって思っていただけるきっかけになれば嬉しいです。