「目に見えないけれど、確かにあるもの。」

— 麻炭とワインと、カーヴ田中屋の空間について —

「このグラス、なんだか味が違う気がする。」

最近、そんな声をお客様からよくいただきます。

先月から、有料試飲のワインを「麻炭を使ったワイングラス」でお出ししているのですが、グラスが変わるだけでワインの表情がまるで違うように感じられる。なんか味の角がとれた気がする。そんなお声をたくさんいただいています。

実は僕自身も、このグラスで飲むと「なんか違う」とずっと感じていました。

でも、それをどう言葉にしたらいいのか、ずっと迷っていました。

芦屋のココザイオンさんでのワイン会の時に、試飲のためにお借りした麻炭のグラス。飲んでみると「味の角が取れて、ふわっと優しくなってる」

参加者の方にも、この体験を共有したくて、麻炭グラスと普通のワイングラスで飲み比べてもらうと、麻炭グラスのほうがなんか美味しいってみんなが驚き、その日は不思議なことに、ワインがどんどん進んで、通常2時間の会が、1時間半で終わってしまった。

それは麻炭グラスで飲むワインが飲みやすくて、みんなするする飲んだことで、終わるのが早くなったのだと思います。

そんな経験もあり、麻炭の魅力を深く感じた。

自分だけではなく、お客様がその“違い”を感じてくださることで、「やっぱり感じる人には、ちゃんと伝わるんだな」と思えるようになりました。

だから今日は、少しだけ勇気を出して、「麻炭とワインの不思議な関係」について書いてみようと思います。

麻炭との出会いは、10年以上前。

元スタッフの京子さんが教えてくれたのが最初でした。

ピンクの袋に入った真っ黒な粉末を見て、「なんだこれ?」と不思議に思いながらも、どこか直感で「なにかいいかも」と感じました。

理由も根拠もなく、なんとなく心が惹かれた。そんな感じでした。

2014年4月、麻炭の開発者・伊香賀さんが大阪で話をされる会があると知って、参加してきました。

そのときの伊香賀さんの一言目。

「麻炭は衣・食・住に活用できます。

ご自身で“感じて”みて、ピンときたら取り入れてみてください。」

押しつけがましくなく、相手の感覚を信頼して話される姿に共感しました。

「この人の在り方が素敵だな」と思い、そこから麻炭への興味がぐっと深まっていきました。

「麻炭水に、ワインを漬けたことある?」

その後のご縁で、伊香賀さんにマキコレワインをお届けすることになりました。

何本かセレクトして送った後、いただいたメッセージが今でも忘れられません。

「カーヴィーちゃん、麻炭水にワイン漬けた?」

(※ちなみに「カーヴィーちゃん」というのは、カーヴ田中屋=カーヴィー、からくるあだ名です)


「いや、漬けたことないです」と答えると、伊香賀さんはすごく興奮気味に、

「すごいよ。麻炭水に漬けると、ワインが喜んでる。すっごく美味しくなってる!」

と教えてくださいました。

マキコレワインは添加物が一切ないため、そもそも漬ける必要はないと思っていました。

でも、そんなに言うなら…と、数本を麻炭水に一晩漬けて飲んでみたんです。


麻炭水に漬けたワインを飲んでみると、

「う〜わっ、すっご。全部、花開いてるやん。」

その一杯を飲んだ瞬間、思わず声が出ました。

少し硬さを感じていたワインが、まるで別のワインのように花開いていたんです。

「こんなにこのワイン、美味しかったのか」と、驚きながら、感動しながら、何度も確かめるように飲みました。

説明しようとしても難しいけれど、

麻炭に触れたワインは、“何か”が変わる気がする。

頭で理解するよりも、身体と舌で、感覚で、それを受け取っていたように思います。


麻炭漆喰の壁を、ひとりで塗った日

麻炭に触れたワインの魅力に、この感じをどうにかして、お客様に届けることが

できないかなと考えていました。

「瓶ごと水に漬けるとラベルが傷む。じゃあ、どうしようかな?」

そんなとき、伊香賀さんが教えてくれました。

「麻炭と漆喰を混ぜた素材を、空間の壁に塗ってみたら?」

それが、今の「麻炭漆喰の壁」につながります。

2014年5月。僕は左官仕事もしたことがない素人ながら、ひとりでハケを持ち、麻炭漆喰を塗りました。


それから

麻炭漆喰をお店に取り入れて、10年。

ヒマラヤの麻炭が登場した時も、ヒマラヤの麻炭を塗りたいと

取り入れてて、10年の間に3回壁を塗りました。

最初に塗って感じたのは、「この空間、すっとしてなんか心地いいな」という感覚でした。

それ以来ずっと——

この空間に置かれたワインは、僕なりに想うのが、

なんとなくですが“いい顔”をしている気がしています。

そのことを、誰かにそれを説明しようとは思わなかった。

感覚的なことを伝えるのがちょっと怖かったのもあるし、

この空間にあるワインが、すこしでも飲んだ人の笑顔が広がるのなら、それでいいなと。

マキコレワインの魅力が多くの方に届けば嬉しい。

プロの手で、空間がさらに整いました。

昨年(2024年)春。

「ココザイオン」さんにお願いして、カーヴ田中屋の全体を塗り直していただきました。

バックヤードも、お手洗いも。

お店全体が、より居心地のいい空間になったと感じています。

全体を塗ると、空間がより引き締まったような感じなのと、

心なしか空間が広くなったようにも感じます。

しっかりプロに塗っていただくことで、より空間がよりよく感じ、
麻炭って素晴らしいって改めて思いました。

麻炭を通じての空間のやさしさが、少しでもワインの美味しさにつながっていたら。そう願いながら。

カーヴ田中屋でのワインが飲まれる方の笑顔につながればとても嬉しいです。